■2004年01月29日(木)デッドヒート | 24:09 電車を降りた。真冬の、それも深夜だというのに襟首から入る風を気にしていないことに思い当たる。「暖冬」という言葉が頭をかすめた。ふと気づく。
プァーーーーーーーーーン
あ。
降りる駅を1つ間違えた。
……
切り替えよう。帰らなければ仕方がない。幸いにして、この駅からの深夜バスはまだあるはずだった。時刻表は次のバスが最終、24:30であることを示している。
遅い。
あと21分もある。この差であれば歩いた方が早いのではないだろうか。走れば確実に早い。逡巡、むらむらと負けず嫌いの血が駆ける。走り出していた。
30秒後。
ぜっはーぜっはー
喘息を出す。体力と体調と環七周辺の大気汚染の具合を考えてから走るべきだったに違いない。だが、後悔は後回しだ。靴ひもを結び直せばまだ走れる。バスに負けるわけにはいかない。
駅から自宅までバスでは10駅。8駅目までバスの姿は見えず。勝った、と思った。9駅目を過ぎて、信号で歩を止める。背中を悪寒が走る。振り向くと、闇の霧から2条の光が、続いて紅い文字が浮かび上がってくる。残り100m。追いつかれた。信号明けのスプリント勝負。ゴールに着くまでにバスはもう1度信号がある。こちらはフリーだ。抜ける可能性はある。赤信号が下に落ちて、青に移る。走った。フォームなど考える余裕はない。ただ右足と左足を送り続ける。抜かれ、抜き、そして…… 抜かれた。ゴール直前。わずか2秒の差。負けた。しかし、無念さはない。真剣勝負のあとの、すがすがしい気持ちだけが残る。お互いよく走った。バスと健闘をたたえ合う。怪訝な顔の運転手と、降りてきた乗客。気にすることはない。彼らには僕らの友情などわかりはしないのだ。
後ろで猫がニャーと鳴いた。
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……しまった、オチがない!
「エリア88」見ながら可能な限り脚色してみましたが、要するにバス待ってた方が早かったよ、やってらんねーという話じゃね。うん。 |
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